A stitch in time saves nine.
昨日の『転ばぬ先の杖』つながりで
今日縫っておけば、1針縫うだけで済むほころびも、ほっておくと大きくなって10針縫うことになってしまう
→いまできることは早めに手を打っておく
→転ばぬ先の杖
ということで、この英文の対訳を『転ばぬ先の杖』とすることもあります(ちょっと違う気もしますけど)
『stitch(針)』が主語で『名詞』。
『in(~の中に)』が『前置詞』で、『time(時間)』を引き連れているのですが
『in time』はこの組み合わせで色々な意味がある『熟語』として覚えることになります。
が、「時間の中で」→「時間内に」→「間に合って」→「時間通りに」→「ちょうどよい時に(適時に)」
という一連の意味の変化の流れがつかめれば、状況に応じた訳ができるでしょう。この場合はいちばん右。
問題は『in time』が2語で『名詞』を修飾するので『形容詞』になるのですが、英語では2語以上は前からでなく、後ろから修飾するというルールがあるので、注意。
a long stitch 「長い針」
a stitch in time 「適時の(ひと)針」
この長い『主語』の後ろの『save』が『動詞』
『save』は、何かを別の安全で確実な場所へ移動するイメージが大切で
「人などを」安全な場所へ移動する→「~を救う」
「自分を」安全な場所へ移動する(=危険な場所から抜ける)→「うまく切り抜ける」
「金銭などを」確実な場所に移動する→「蓄える、とっておく」(「データをセーブする」はこれ)
「労力、費用を」確実な場所に移動する→「節約する」
「節約する」→「しなくてすむ」→「省く」
一見するとバラバラな訳も、ひとまとまりでつかめると思います。今回はいちばん下の意味。
A stitch in time saves nine(stitches).
「適時の1針が9針を省く」
軽く訳しましたが、『stitch』は生物ではないので『無生物主語』
特に英訳では日本人を非常に困らせる曲者です。
It was ( ) ( ) little money.
「それでいくらか金が浮いた。」
となると、とたんに難しくないですか。
「それでいくらか金が浮いた。」←「それは私にお金を節約させる」
「それ」が主語になったときに、適当な『動詞』が浮かぶようになると、立派な英語脳です。
ここで、日本語と英語で数字が違うじゃん!
と思った人はいませんか?
では算数の授業(笑)
日本語では『今日は1針』『明日は10針』です。
英語では『今日は1針』ですが、その1針が『明日の9針』を『省き』ます。
つまり、省かれないとすれば、『明日は1+(省かれたはずの)9=10針』となります。
『動詞』が『save』だったがゆえのからくりですね。
ちなみに、これはもともとが東洋のことわざで
実はこの針とは裁縫の針ではなく、鍼灸治療で使う針のことだそうです。
つまり、いま打てば1針で済むような病気も、ほうっておくと10針打たねばならなくなるほどひどくなってしまう。
という戒めからきているとのこと。
なんとなく納得いかなかった針という表現が、すっと入ってきた瞬間でした。